ミラン・クンデラと小説


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冗談

【作品紹介 - Amazon.co.jpより - 】
チェコの作家ミラン・クンデラ(1929〜)の最初の長編小説(チェコ語の初版は1965年出版)。映画化もされた「存在の耐えられない軽さ」が最もよく知られている作家であるが、「存在の…」においてみられる彼の小説手法やテーマは、本作品に、すでにあますところなく盛り込まれており、さまざまなテーマや細部間のバランスの絶妙さなど、むしろ本作品の方が完成度は高い部分もあるのではないかと思われる。

舞台は共産党による独裁政下のチェコ。ある生え抜きの共産党員で前途有望な青年が、罪のない「冗談」を告発されたのが原因で転落し、挫折の末に裏切った旧友への復讐をもくろむが…というあらすじだが、国家体制批判が目的の小説ではない。ここでは政治体制の問題は、より普遍的な人間性の問題を扱う際の「レンズ」のような役割を果たしているにすぎない。著者自身は「これはラブ・ストーリーなのです」といっている。

この作品についてもっとも強調すべきは、練りに練り上げられた「作品」としての美しさ、芸術性の高さだろう。ルドウィグ、ヤロスラフ、ヘレナの3者=3主題がかわるがわる一人称の独白で語られていき、最終章ではそれがめまぐるしい渾然一体のコーダへと収斂(しゅうれん)していくさまや、愛や裏切り、卑劣さや絶望などさまざまなテーマが重層的に綾をなしているさま、そして洗練・皮相さに対する重さ・純朴さなどの対比が主旋律と副旋律のように響きあうさまは、さながらシンフォニーを聴いているかのごとくである。そして、醜も、悪も、愚かさも、弱さも、卑劣さも、後味の悪さも、ここでは輝くばかりの晴れ着をつけてそれぞれの短い晴れ舞台を演じている。

「口の肥えた」読者の「洗練された良質の作品」への渇望を満たしてくれることは間違いない。(小野ヒデコ)


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冗談 (Lettres)


【ユーザーによる評価】 平均評価: 5.0/ 総数: 4件
[5点] 傑作 こんな物語があるなんて
20世紀文学の傑作。この本を読んだのは、2,3年程前かな。読んでみておっかなびっくり。こんな小説があるのか、って。世界には、こんなに力強い文学が存在するんだな、って。ほんとうに驚いてしまった。なんか、ぞくぞくする感覚が読む間中、僕を取り巻いてて、なんか、半端な物語体験ではなかった。きっと、まだまだ僕は若すぎて、この小説をもっと深く読みこなせるようになるには、もっともっと実生活でいろいろ経験し、迷い傷つき、人を愛して生きることが必要なんだろうな、と思った。クンデラの作品は、あと『存在の耐えられない軽さ』を読んだ。僕は『冗談』のほうが好きだ、と思う。でも、またいつか読み直さなくちゃ。クンデラの本は他にも読んでないのたくさんあるし、これからひとつひとつ大切に、じっくり読んで行きたいな。
軽い気分で手にとって、気軽な読書、ってな感じでは読めないけど、こういうじわじわと身にしみるような物語を、僕は、これからも読んで行きたいな。世界には、まだまだいっぱいそういう物語が伝わってるだろうから。
(2006-05-04)
[5点] 全クンデラ作品のなかで
クンデラの作品はほとんど読み、現在は卒業研究にしている。「存在の耐えられない軽さ」「不滅」などはもちろん素晴らしい傑作だが、ぼくはやはり、この「冗談」が一番好きだ。これだけ日常レベルでチェコでの時代体験を書いた小説は、クンデラノのなかでこれが最後だろう。身近な素材を使っているからというだけではなく、どこまでも人間や出来事が生々しい。しかし、これは私小説などではない。ここには、気まぐれな歴史に翻弄される自我が、その彷徨いが、ときには惨酷に、ときには滑稽に、そして最後には静かな憂愁をもって語られている。「なにがほんとうの悪か?」そんなこと考えてはダメだ。誰もが正しくない、そして間違ってさえいないのだ。それがクンデラにとっての道徳なのだ。
(2005-11-23)
[5点] 「勘弁してくれ、これはラヴ・ストーリーなんだ」
時代と、そのなかに形成されえる自己と、それが残すことのできる軌跡とは、なんと不条理な、意味をもたせることの出来ぬかなしさなのだろう。それでも、すべての事物は「無実」であって、「罪は別のところにある」と著者の分身は述べる。

恨むことでも愛することでもバランスなどとれなかった静かな崩壊、そこでも、音楽によってその悲しみを想い、また喜びを懐かしむことができるルドヴィーク(とわたしたち)は、一体どこへ行くのだろう。

政治的観点からの批判に対し著者は、「これはラヴ・ストーリー」だと述べた。そう、まったく、これはラヴ・ストーリーなのであった。 (2004-06-18)

[5点] この本を始めて読んだ時の感動といったら!
感動といっても、涙がポロポロ落ちるような、そんなものではありません。政治にのめり込み、参加し、その思想に、その歴史に振り回された小さな個人の運命が、そのそれぞれの視点から描かれ、いろいろな角度から人間というものに光を当てられることにより、人間の立体的な姿が見えるように注意深く物語が描かれ、人間とは何なのか、その一筋縄ではいかない心の、人生の、運命の複雑さがユーモアの中に表現されていることに心を奪われたのです。読み終わった後、しみじみとしたものが感じられますよ。 (2003-11-29)
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ジャックとその主人

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小説の精神 (叢書・ウニベルシタス)


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.0/ 総数: 2件
[3点] 小説家の内側
本書は、1979から1985年に発表された、サーモンによるインタビューと73語の解釈、アメリカとブラジル、エルサレムでの講演に手を加えてまとめた物である。内容は、小説の意義、小説が成して来たこと、小説は死んだか、等。

クンデラは近代の還元主義を批判し、さらに、小説は自我を完全には捉えられないと言う。すなわち、ハイデッガーの哲学やハイゼンベルグの不確定性原理に代表される「東洋の発見」が、クンデラがヨーロッパの芸術と考える「小説」においても起きていると主張する。これらは現代を理解するキーワードであることからも、クンデラのこの主張は、今後の、もしくは、小説の本来の姿を明らかにするヒントたるかもしれない。インタビューや講演を元にしている為に随所に論理の飛躍が見られるが、このように作品の背景を洗いざらい語るクンデラの勇気は尊敬に値する。 (2005-04-27)
[5点] 小説とは何か
本の溢れかえる現代において、本って一体なんなんだろう、本を書くとはどういう行為なのか、どういったものが読むに足りるのか、と感じる方も少なくないかと思うのですが、少なくともその小説というジャンルについて、なるほどと納得できる、実践者の小説についての定義を知ることが出来ます。またそれは同時に、人からどんどん個人生活、個性といったものを奪ってしまうこの現代社会についての分析、批判、警鐘でもあります。また、クンデラが言葉の意味を定義するクンデラ辞書もついていて、クンデラファンには見逃せません!もちろんファンでなくてもお勧めです。 (2003-11-29)
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