村上春樹にご用心


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.0/ 総数: 16件
[5点] 内田的日本文学論
内田さんの村上さんへの強烈ラブレターである。
出だしが幻には終わったがノーベル文学賞を受賞した暁に出るはずの新聞社への原稿。
自分自身、村上さんの本は書棚にあるが果たして読んだのか読んでないのか記憶が無い。でもこの本は村上本を読んで無くても日本の文学界や日本の文壇と呼ばれる業界が垣間見える。日本で評価されないが世界で評価される村上文学の理由である。翻訳家でもある(最近は養老さんにべた褒めされる内田さんでもあるが)内田さんが、これでもかと言う位に村上文学を咀嚼翻訳しているのである。例えばこんな文章であろう。
世の中には「誰かがやらなくてはならないのら、私がやる」というふうに考える人と、「誰かがやらなくてはならないんだから、誰かがやるだろう」というふうに考える人の二種類がいる。 村上春樹は前者なんだと言う。それが「雪かきをする人」なのだ。この文章は内田さんのブログ2005 12.27で読める。その他、倍音からの村上春樹論も凄い。ちなみに内田さんのブログを真剣に読んでいれば本書は読まなくても理解できるのであろう。その辺はご自身も指摘しているところである。 (2008-03-10)
[5点] 村上さんと内田先生にご用心
「なぜハルキ・ムラカミは、世界中で読まれてるんですか?」との問いに、内田先生はいつもの鋭くも愛情に満ちた思いを繰り返し述べていきます。そうなのです。内田先生のこのご本は、大好きな小説家・村上春樹さんへの愛情に満ちた、公開ファン・レターだったのです。

とはいえ、ぼくだって、村上さんの小説やエッセイを尽く愛する読者であるわけで、内田先生よりもぼくのほうが村上さんの小説やエッセイを愛していない、愛情が少ない、などとは誰にも言えないわけです。すなわち、ぼくだって内田さんと等しく、村上さんの小説はこの「ぼく」に向けて書かれていると、そう誤読してやまない、幸せな村上ファンのひとりなのです。

やっかいなのは、ぼくは内田先生のことも、村上さんへの愛情と同じ程度に、大好きだということです。言葉は違えど、雪かき仕事の大切さを知っているという点で、内田先生の数々の著書も世界中で読まれてしかるべきだと、そのように思っている一読者なわけです。

「うなぎくん、小説を救う」という文章は、そのなかでも、いちばん楽しく読みました。柴田元幸編訳『柴田元幸と9人の作家たち』(アルク、2004年)に収録された、柴田・村上対談の席上で、村上さんが説く「うなぎ説」を扱ったものです。小説を書くうえで重要なものは、うなぎなのだ、という説です。つまり、小説には作者と読者のほかに、もうひとり別の第三者が必要なのだ、それが「うなぎ」、あるいはうなぎなるものだというわけです。とっても、興味深い説ですね。

あとがきの最後に、内田先生は村上さんにむかって謝辞を述べ、「もっともっと書き続けてくださいね」と結んでいます。ほんとうに、その通りなのです。村上さん、もっともっと書き続けてくださいね。ぼくは、はやく長編が読みたいです。

そしてぼくは、内田先生にも「もっともっと書き続けてくださいね」と述べたいのです。 (2008-02-29)
[5点] 学習塾の授業で使わせてもらいました。
入試問題によく使われている内田氏の文章ですが、

『村上文学における「朝ご飯」の物語論的機能』(P125)

を中学生に対して、小説における心情描写について説明する時に

プリントして使わせてもらいました。


内田氏は(村上春樹を否定する)蓮實重彦氏をボロクソにこき下ろしていますが、

『ふるさとは遠きにありて思ふもの』(P227)

における家族論を読むと、蓮實重彦の小津安二郎に関する評論と通じるものがあると

感じました。

テレビドラマ『北の国から』を引用しながら、非常に感動的な家族論になっていると

思います。 (2008-02-19)
[4点] 村上作品には「父」が登場しないんですよ
この本は冒頭の、村上春樹がノーベル賞を取っていたら新聞に掲載されていたはずの文章とあとがき以外、すべてブログに掲載されていた記事の再録です。ですから、日々内田氏のブログ、「内田樹の研究室」を閲覧している読者はとりたてて新しい発見はないと思います。

むしろこの本は村上春樹のファン、とりわけ「内田樹を読んだことがない村上春樹のファン」の人にお勧めです。レビューを見ていますと、村上ファンの方ほど批判的なコメントを書かれている傾向があります。それはおそらくファンの誰もが村上作品に対して、その人なりの解釈をされていて、内田さんの解釈とマッチしないからだと思います。解釈は世界観と言い換えてもいいと思いますが、それを他人に壊されることは、それは辛い経験ではあります。私自身も自分の好きな作家や作品について、私の解釈を根本から否定する評論を見ると腹が立つこともあります。しかしその「私から見ると間違っているとしか思えないような解釈」を解釈した向こう側で、自分自身の解釈もより深くなるのではないかと思うのです。少しマゾヒスティックな営みではありますが、その「異物」を自分の中に取り込むことで、さらに深みのある村上作品の解釈ができるのではと、私は思います。

この本の中で秀逸なのは「村上文学の世界性について」の章。
村上作品には「父」が登場しないんですよ。知ってました?
その父とは、一家の大黒柱と呼ばれている中年男性、いわゆるオヤジのことではもちろんありません。
オヤジが出てこない小説にも「父」は必ず登場します。ふつうはね。
でも村上作品には「父」が出てこない。だから世界的なポピュラリティを獲得したんだと内田さんは考えます。

「何?その「父」って」と気になってくるでしょ?
そんなあなたは今すぐ書店へGO! (2008-01-08)
[4点] うーん・・・
 「本書は、私がこれまでに書いた村上春樹関係のテクストのほぼすべてを網羅したアンソロジーである」(本書 247頁)これは、あとがきの内田氏の言葉だ。アンソロジーとは、いろいろな詩人・作家の詩や文を、ある基準で選び集めた本というような意味だが、その表現するところの領域にぴったりおさまっているっているという印象である。
 
 村上春樹論は多数あり、肯定否定さまざまだが、本書は村上肯定派に属する。内田氏の村上氏への好意が随所にうかがえ、しかもその好意が嫌味ではない。内容もわかりやすく、「かゆいところに手が届く」感じもたっぷりだった。内田氏の確かな教養と読書量に裏づけされた村上論は説得力があり、他の批判家とは一線を画す印象だ。

 しかしアンソロジーというだけあって、ややまとまりに欠けた。まとまりをつけること自体無理な作業なのかもしれないが、その印象は否めない。村上春樹に対して講評をすることは、まさに「文化的雪かき」のごとく、誰かわからない誰かのための果てが無い作業なのかもしれない。

 それでも本書が村上春樹をまた読みたくさせる一冊であることには変わりはない。良い文章だ。 (2007-12-26)
【関連商品も見たい!】
 ・ ひとりでは生きられないのも芸のうち
 ・ 大人は愉しい (ちくま文庫 (う29-1))
 ・ 街場の中国論
 ・ 合気道とラグビーを貫くもの 次世代の身体論 [朝日新書064] (朝日新書 64) (朝日新書 64)
 ・ 私の身体は頭がいい (文春文庫 う 19-2)

Tag : 村上春樹

沈黙 (集団読書テキスト (第2期B112))


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 13件
[5点] 脚本に
ぜひ脚本に。中学、高校の演劇部あるいは文化祭で上演して欲しい作品です。素晴らしいものになると思います。 (2007-07-28)
[5点] 扇動者と被扇動者
「本当に怖いのはそういう連中です」が圧巻である。
ひょっとして、少なくない数の「少数者」を決定的に損なってきたのではないか……。自分は悪人じゃないと思って無邪気に生きている人は是非読んでいただきたい。 (2006-02-03)
[4点] この教材を手にすることができる中高生は、うらやましいことだと思う
 短編集「レキシントンの幽霊」に収められていた短編「沈黙」を、中高生の集団読書の用のテキストとして、出版されたものだそうだ。
 教材ということで、難しい単語には注釈があり、ソフトカバーの簡易装丁です。
 この「沈黙」を教材とする学校がどの程度あるのかは不明だが、どのような授業が行われているのか、非常に興味深い。

 僕が中高生であった頃には、教材として「村上春樹」を取り上げることは無かったと思う。
 僕が「村上春樹」に夢中になったのは、成人する少し前のことである。中高生の時、こんな本に触れる機会があったら、僕の人生も、多少は変わっていたかも知れないと思うと、この教材を手にすることができる中高生は、うらやましいことだと思う。 (2005-11-09)

[5点] 男は黙ってるのも魅力的
 村上春樹の作品にしては非常に変わった内容である。しかしそこには必ず村上ワールドが随所に展開されていて、普段村上作品を読み込んでいる人にはオススメである。また読んだことのない人にも特に複雑な内容ではなく、スラスラ読めるのでぜひ一度手に取って体験していただきたい。なによりも1話しか入ってないからね(笑)長い小説の好きな個人的には像の消滅と合わせて読みたい作品である。 (2005-09-11)
[3点] 文学的な一面をのぞくことができました
主題がハッキリとしているので一般的に受け入れられやすい作品だと思います。
文章も読みやすいので一気に読み切ることができましたが
ハルキ独特の雰囲気は少し薄いような気がしました。 (2005-06-29)
【関連商品も見たい!】
 ・ ふわふわ (講談社文庫)
 ・ 使いみちのない風景 (中公文庫)
 ・ 「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi original (66号))
 ・ 若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)
 ・ 人生の教科書 よのなかのルール (ちくま文庫)

Tag : 村上春樹

ユリイカ (第32巻第4号3月臨時増刊) 村上春樹を読む

Tag : 村上春樹

風の歌を聴け―Hear the wind sing 【講談社英語文庫】


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 6件
[5点] *日本語と英語を交互に読んでみました!
 ご存知、村上春樹さんのデビュー作です!
まずはクオリティーの高さにビックリ!
最初からこんなに書けたんだ〜、すごい!と感じました!
これを読んだら作家をめざす人のほとんどが尻込みしてしまいそう!
 英語のほうですが、村上作品のメジャーなものは英訳されているのですが、、
いつも思うのは翻訳者の質の高さです!
 他の作家だと、原作と翻訳が「別の本」のようなものが多い中で、
村上さんの翻訳者はレベルが高いのか原作世界とのずれが少ないのです!
むしろ翻訳のほうが村上さんの世界が、わかりやすいかも?と思う時さえあるのですから、、、 (2007-08-18)
[5点] 位相差
 どこか人をくったような、微妙な間。
村上春樹の文章を“わたし”が評するなら、そんな感じ。
日本語で初めて読んだのは、もう春樹がビッグネームになってからでしたね。
のちのちの作品のエッセンスが凝縮された良作です。もちろん。
じつは日本語で読んだときには、むしろその凝縮感が、重かったかも知れません。
今回、英語で読むと、もっとあの間を感じることができました。
軽く海を泳ぐような、春の蝶のような、五月の風。
英語力がないせいでしょう、イマジネーションを働かせなければならない分、
くっきりと春樹ワールドを嗅ぎ取ることができたような、変な体験でした。
 
お勧めします、巻末の注釈を見なくても、高卒レベルの英語でいけます。

(2007-06-15)
[5点] Hear the wind sing
"Hear the wind sing" is the English version of 「風の歌を聴け」, originally written by Murakami
Haruki.

I like this line: "There's no such thing as a perfect writing just like there's no such thing
as a perfect despair."

I don't know whether there exists a perfect despair or not; however, suppose there existed "a perfect despair" , in what way could such a thing as " a perfect despair" exist.

It is well translated into flowing colloquial English, but still keeps the atmosphere of the original book. (2006-03-02)
[4点] さらっと読めます。
 さらっと読めますが、決して内容が薄いということではありません。
全体的に不思議な雰囲気が漂いつつも、現実的な作品と言えます。村上春樹さん以外の人ではこの雰囲気は出しえないでしょう。
 文章よりも内容、最近では特に波乱万丈なストーリー展開の作品が人気を博している中で、村上さんの作品は日常を語ったものでありながら、その表現に何か惹きつけられるものを感じます。文学というのはこういうものだ、と思える作品です。 (2005-02-26)
[4点] 原点
この本は「ノルウェイ〜」を読んだ後くらいに読みました。春樹氏がどういった経緯で小説家となったのかを知っていましたので、何となくその背景に照らし合わせて読んでしまったのですが、それでも胸に迫る物がありました。

 冒頭の「例えば象について〜」の箇所。ああ言った表現方法は今まで見たことも聞いたこともなかった種類の物です。独特のリズム、切なくそして示唆と啓示に富んだ、彼の記念すべき処女作です。
 春樹フリークでない人にも、是非おすすめしたいです。 (2001-10-18)

【関連商品も見たい!】
 ・ A Wild Sheep Chase (Vintage)
 ・ Dance, Dance, Dance
 ・ Norwegian Wood (Vintage)
 ・ Hard-Boiled Wonderland and the End of the World: A Novel (Vintage International)
 ・ 坊っちゃん―BOTCHAN 【講談社英語文庫】

Tag : 村上春樹

魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園


【ユーザーによる評価】 平均評価: 5.0/ 総数: 2件
[5点] モノクロによる白昼夢の世界
訳者が村上春樹になったことをのぞけば、基本的には「魔術師ガザージ氏の庭で」
というタイトルで ほるぷ出版から出ていた作品といっしょ。

タイトルが微妙に変化していることから察するに、訳文のいいまわしも
村上さん的な味付けがあるのでしょう。興味ある方は新旧2冊を読み比べたら
いいかと思います。(原書名:THE GARDEN OF ABDUL GASAZI )

作者オールズバーグの魅力、それは魔法がこの世に存在すると
確信させるだけの画力と構成力につきる。

逃げ出した犬を追った少年が入り込む、ガサツィの巨大な庭園。
そこで起こる奇妙な出来事が臨場感いっぱいに伝わってきます。

狐に包まれたような読後感は、麻薬のようにクセになります。 (2005-10-14)

[5点] モノクロの美
作者お得意のモノクロの世界が広がります。
今までにはないスタイルの人物描写が印象的です。
物語はいつになく暗示的に思えます。 (2005-09-16)
【関連商品も見たい!】
 ・ 2ひきのいけないアリ
 ・ いまいましい石
 ・ ジュマンジ
 ・ さあ、犬になるんだ! (村上春樹の翻訳絵本集)
 ・ The Stranger

Tag : 村上春樹