丹生都比売


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 8件
[5点] 草壁皇子の心の内を描いた秀作
天武天皇、持統天皇、大津皇子の名は知っていても、
草壁皇子のことはあまり知られていないかもしれません。
皇太子でありながら、天皇になることなく亡くなった草壁。
異母弟の大津がすばらしい人物と歴史書に記される中、
草壁については多くが語られていない。

そんな皇子を、梨木さんは優しく描いている。
異母弟や母、乳母を気遣うことができる心優しい少年。
政治的才能ではなく、人を思いやる心に恵まれた皇子。
自分が殺されるとわかっていても、悲しみを独りで胸に秘めた。
私の中で、草壁のイメージがしっとりと息づいている気がします。 (2007-03-05)
[5点] 梨木さん、すごい。
実在の人物の人生を描く、これまでの梨木さんの
著書とは一味違う本書。

なんといいますか、こういう話、もっともっと読みたいけれど、
書けるのはきっと梨木さんだけだなぁと思ってしまいました。
少なくとも今は梨木さんだけ、だと思います。 (2006-03-16)
[4点] 透明な静けさを湛えた物語
大海人皇子(おおあまおうじ)と大友皇子が、天智天皇崩御の後、皇位継承権を巡って戦った壬申の乱。話はその前年、671年の秋、大海人皇子を父に、鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ ※鵜の字が違ってますが)を母に持つ草壁皇子が、恐ろしい夢を見るところから始まります。

不穏な空気が立ちこめる吉野の宮で、少年の草壁皇子は、キサと名づけた言葉の不自由な女の子と出会います。そして、草壁皇子はキサから、銀(しろがね)の光を放つ勾玉(まがたま)をもらうのですが……。

透明な静けさを帯びた空気の中で、草壁皇子の孤独な気持ちがひたひたと胸に迫ってきた物語でした。殊に、自分とは違う気質の母親、鵜野讃良皇女(後の持統天皇)に向けられた草壁皇子の眼差しに、哀しみと寂しさが湛えられていたところに、切ない気持ちにさせられました。

表題の「丹生都比売」(におつひめ)とは、水銀(みずがね)を産し、清らかな水が流れている吉野の地を統べているご神霊、姫神さまの名前です。

出版された梨木さんの作品としては、『西の魔女が死んだ』に続く二冊目になるのでしょうか。抹茶アイス色した本の装幀も素敵。でも、物語の色合いとしては、草壁皇子がキサからもらった勾玉の銀色、鏡のようなきらめきを放つその銀の色が心に残ります。 (2004-07-08)

[3点] 聞いたことある人名がたくさん
 持統天皇、天智天皇、草壁皇子、大津皇子、大海人皇子…。日本史で出てくる有名な人たちですよね。学生時代を終えてずいぶんたつので、久しぶりに出会った気がして懐かしかったです。
 感情を抑えて、あっさりと書かれているので、物足りなさも残りました。兄弟の確執、我が子に対する親の思いなど、もっと知りたい!

 梨木さんの本はいくつか読みましたが、日本の歴史小説的ファンタジーは初めてです。他にもあるなら読んでみたいと思ったし、できればこの話の詳細版を出して欲しいとも思いました。 (2004-03-11)

[5点] 読むほどに…
厳選されたことばを紡いで書かれており、書かれていない部分に対する微妙に不安定な感覚が、独特の雰囲気を作り上げているお話です。
読者はその「すきま」に、山間をわたる風や湧き出る水の音を聞くような気がします。
読み返すたびに新たな感覚を抱かせる、とても不思議な世界。
装丁が、高級なお抹茶の包みのようで美しいです(笑) (2003-07-14)
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Tag : 梨木香歩

エンジェル エンジェル エンジェル


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 24件
[3点] 優しさと残酷さと思い出と・・・
天使のようなお婆ちゃん。おばあちゃんの介護を引き受けることで飼う事ができたエンジェルフィッシュ。天使のようだと母の自慢の主人公。

熱帯魚の水槽の音でおばあちゃんは昔の自分を取り戻し、孫の考子は友達のようになれた。エンジェルフィッシュは小さい魚を食べ始め、とてもエンジェルとは思えなくなってくる。悪魔なエンジェルフィッシュ。

おばあちゃんの女学生時代の物語と現在が交互に描かれていて、物語がリンクされている様な感じで上手いな〜と思った。 (2007-12-02)
[5点] 小一時間もあれば読めてしまうほどの、さらっとした小品

 子供のころの思い出。
 祖母のこと。
 祖父のこと。

 誰しも心の中に持っている懐かしい実家のにおい。
 記憶を思い出させてくれるあたたかな作品。
(2007-10-18)
[5点] 不思議な静けさを感じる作品
優等生でついつい人に合わせすぎてしまうくせがあり、学校からかえるとバタリと眠り込んで
しまって、起きてご飯を食べたり勉強したりは深夜の二時三時・・・という主人公のコウコの
毎日が「ああ、わかるわかる」とうなずけた。年代的には反抗期であってあたりまえなのに
外には出さず、夜の暗さの中に逃げ込む場所を見つける、その背景には「いいおかあさん」
のコワさもあり、そこらへんもうまく匂わせていると思った。
エンジェルフィッシュを暗喩として人の心のダークサイドを描いてはいるが、年齢による衰え
から女学生に戻ってしまった祖母と共有する夜の時間には不思議に優しさを感じ、安らげる。
コウコとさわの二人に語らせたところといい、救いのある終わらせ方といい、申し分ない。
読むことの幸せを感じる一冊。 (2007-09-03)
[5点] 神様がそう言ってくれさえしたら
三世代の女性達、祖母−母−娘を軸にしてまわる物語である。
母を飛び越えて、コウコの物語と、祖母の物語と、二つの時間の交流が始まる。
愛したことも、憎んだことも、ぽろぽろと失われ、過去に封じられていく経験。記憶。歴史。
二人の娘たちの過去と未来において、悔やまれたことが赦されていく。
奥底に隠れて眠る天使にどれだけ気持ちが動かされたか、言葉にできないほど揺り動かされた。
小説の中で流れる緊張と緩和の一瞬を味わってもらいたい。素晴らしい体験だった。 (2007-08-20)
[5点] 僕らは見えない次元でつながっている
誰もが痛みを抱えて生きている。悟りでも開いていない限り、どんなに幸せそうにに見える人でも心の奥のどこかには傷がある。

この本を読むと、その傷についての深い意味を教えられる。僕らが個人的なものだと思っている心の傷や痛みは、他の人の痛みともつながっているのだ。自分が抱えている痛みは、家族の誰かの心の痛みが伝播したものなのかもしれない。他人の痛みを受けとめてあげることで、知らず知らずに自分の痛みにも優しくしている。自分の心の傷を癒すことで、他の人をも癒している。痛みと向き合っていくことで、「実は僕らは世代を越えてつながっている」という事実にたどり着ける可能性は広がる。

字義通りに解釈すれば、善悪がはっきりしているように思える旧約聖書の世界。その教えに従って、自分が善になろうとすれば、他人に悪を押し付け、自分の中の悪を否定し続けなければならなくなる。もしくは、善があまりにも自分からは遠い理想と感じられ、自分に近く感じられる悪を一生背負って生きてゆくことになる。梨木さんは、この旧約聖書の世界の次元を乗り越える必要性を物語る。善悪の二元論を越えるために、まずは僕らが「悪」とみなしていることの中に癒しの種を発見してゆくことが肝要だというメッセージがこの本からは伝わってくる。

心の痛みに重荷を感じている人、自分の中に存在する否定しがたい「悪」について思い悩んでいる全ての人にこの本をお勧めしたい。 (2007-07-21)
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Tag : 梨木香歩

頭のうちどころが悪かった熊の話


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 14件
[1点] 当たり前のことがかかれてますね
あたり前のことが書かれているから、改めてオトナが読むほどでもないと思います。なぜ流行ったんでしょう・・・。子供が思想をめぐらせて読むのはいいかもしれません。 (2008-04-06)
[4点] 「教訓」の無いことが
世間での評判にはまるで疎くて,たまたま,タイトルだけで手にとってしまった本ですが,これは実にうれしい偶然でした。

「じぶんはちょっと他の人とは違うのかなぁ?」なんて,漠然と思ったことのあるひとなら,どの主人公にも感情移入してしまうかもしれません。

「寓話」というとどうしても,「教訓」を引き出したがるオトナがいますが,そんなものでまとめてしまえないお話だからこそ,おもしろいのだと思います。

ちょっと違った子どもを,それでもちゃんとわかって手放してあげられる「池の中の王様」のお父さんはすてきです!

意外と子どももおもしろがるかもしれないと思いました。読み聞かせにつかってみるのもいいかもしれませんね。

で,「わたしのことか?」と興味を惹かれたタイトルの作品に出てくるクマさんは,頭をうった原因もその顛末も,どうやらぜんぜん違うクマさんだったようです。
(2007-12-17)
[5点] 子供に読ませてあげたい。
昔に自分が読んだ色々な童話を
思い出しました。
読んだお話に含まれている教えのようなものは
その時はあまり感じることができなかったけれど、
大人になって、あ、そういうことなんだ。と思える。。
そういうことがたくさん書いてあります。

大人は色々考えながら読むことができるし、
子供は面白い、ちょっとへんてこなお話、と
思って読むことができるし、
そしてそれはきっと心のどこかに残っていくと思います。

息子にも読ませてあげようと思います。
(2007-12-14)
[5点] 大人向きの絵本
星の王子様のような独特な世界観の本です。
でも、7つの短編それぞれに大事なエッセンスがちりばめられていて、読み終わると胸に何かが残る…そんな一冊。
私は心の病ですが、生きることや愛することとか、この本で感じてちょっと涙が出そうになりながらも、元気をもらえました。
大好きな本です!

ただ、好き嫌いはあるかもしれません。
結構いろんな有名人が紹介しているらしく、図書館とかでは予約待ちとかなほど人気だったりするみたいですよ。
大人向きの絵本が好きな方は読んでみてください。 (2007-11-19)
[4点] なかなかどうして
7つの短編からなる作品集。
「人生について考える7つの動物寓話」と、銘打たれている通り、それぞれ、熊、ヘビ、カラス、おたまじゃくし、牡鹿…といった具合に、動物たちを主人公にしている。

ほのぼのと優しげな動物達が繰り広げる物語は、しかしどれも奇妙な味がある。結構、シュールかつシニカル。死の影さえ、ちらちらよぎる。かといって、決してグロテスクではない。何というか、子供の透徹した眼差しで見た世界のような、どこか不思議で懐かしい感じもするのだ。

児童書の体裁をとってはいるが、なかなかどうして、大人が読んで十分に堪能できる本だ。 (2007-09-23)
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Tag : 梨木香歩

この庭に―黒いミンクの話


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.0/ 総数: 2件
[4点] 続編
小さくて、短い本。一瞬で読み終わっちゃう。
「ミケルの庭」続編というけれど、
続きというにはあまりに幻想的なストーリーですが…。
朦朧と夢を見続けているようなお話。

それにしてもミケルちゃんは生きていくのが大変そうだなぁ…
続きが出てくれるのはファンとしては嬉しいのですが。 (2007-03-05)
[4点] 絵本のような本
頭の芯がしびれるような冬の景色が感覚が、読んでいる間目の前に広がってみえました。
簡潔でいてわかりやすい梨木香歩の文章と、やわらかく懐かしいような、それでいてドキッとさせられるような須藤由紀子の絵がぴったりあった、まるで絵本のようなステキな本です。この挿絵がなければ、とても短い物語だし、買おうと思わなかったかもしれません。
「からくりからくさ」「りかさん」とつながるお話なので、両作品を読んだ人に特におすすめです。ただ両作品のように密度の濃いぎっちりとした本ではないので、続編という点に期待をしてると、肩透かしをくらうかもしれません。 (2006-12-25)
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Tag : 梨木香歩

蟹塚縁起


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.0/ 総数: 4件
[4点] 梨木さんの童話小品

 えほん、なのだけれどえほん、らしくない文章で、メルヘンチックというよりは幻想的な、日本の伝統的な昔話に近いような話になっている。

 蟹塚縁起。
 実際にこういうことが起こったのかもしれない、とふと思うような、情景の伝わってくる話でした。併せて、痛々しいほどの、気持ちが。

 絵も素敵で、絵本が好きな方には、お勧めできる本です。
(2007-10-18)
[5点] 所有したい物語
凝視することになるのは、漆黒の闇の中、月の光に照らされ、ぞよぞよと浮かびあがる沢山の蟹の物語。胸衝かれるのは、その蟹たちの、健気さ、律儀さ。澄み渡る文字で描かれているのは、情から生まれた怨みと、同じ情から生まれた許し。そして、鏡花の冴えた啖呵を偲ばせる、最後の最後の決め台詞。美しい絵。所有したい物語。 (2004-12-13)
[4点] ずしんと心に響く上質の短編
名主の息子に弄ばれている蟹を助けてやったとうきちは、夜中、蟹の這う音に目を覚ます。蟹は名主の家に向かって長い長い列を作って進んでいた・・・・。蟹ととうきちと名主の間には前世からの深い因縁があった。

情念や情愛の深さが怒りや憎しみをより深いものにするということ、人を許すということなど、読み終わったあと、ずしんと心に響く上質の短編と思います。

最後のシーンは、絵のないほうが、(梨木香歩さんの言葉の力だけのほうが)よりいっそう、月へ向かって飛ぶ蛍の幻想さが際立ったのではないでしょうか。 (2004-07-05)

[4点] 月夜の晩に
まるで、一冊の重厚な歴史小説を読み終えた後のような、ずっしりとした読後感。
一頁ごとに広がる独特の絵画の世界に引き込まれ、心地よい虚脱感すら感じさせられる、不思議な絵本です。
月のきれいな晩に、じっくりと読んで見てください。 (2003-03-21)
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Tag : 梨木香歩