その日のまえに


【ユーザーによる評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 93件
[5点] 生きる(死ぬ)ということはどういうことか
 冒頭の『ひこうき雲』。
 小学校6年生の嫌われ者「ガンリュウ」は,同級生たちとは異なり,一人死に行く。
《どうして,ガンリュウだけ,なのだろう。僕たちとガンリュウの違いはどこにあったのだろう。たまたま? 運が悪かったから? 運命?》(40頁)
 そう不安になった少年も大人になる。妻の祖母がアルツハイマーになり,施設に入所している。見舞いに行くと,連れて帰ってもらえるのだと喜んでは,ぬか喜び・・・の繰り返しの祖母。
《もしも神さまがいるのなら―そして,ひとの命の行方は神さまが決めるものなのだとしたら,おばあちゃんは誰よりも長生きをするよう,神さまに選ばれてしまったのだろうか。ガンリュウを僕たちの世界から引き離して,遠くへ連れて行ってしまったのも,同じ神さまのしわざなのだろうか。》(43頁)

 『ひこうき雲』からスタートして,色々な「死を見つめる」視点のあり方を描写した後,妻「和美」を失う「僕」の『その日のまえに』『その日』『その日のあとで』と続く,一連の連作短編集。構成のうまさも光るが,「人が生きる(死ぬ)とはどういうことなのか」を考えさせる契機になる作品だった。 (2008-04-11)
[3点] 泣けないんだよなぁ。この題材にして。
7編のオムニバスで、なんとなく、それぞれの話が、ラストのその日に絡んでくるカンジで
上手くできてます。
話も美しく、心温まるカンジもある。

けれど、人の死が題材なわりに、キレイにまとまりすぎて
なんかテレビドラマでも見てる気分になる。

とくに、最後の「その日」3部作は、作りすぎで
ドラマでも、かなりメロドラマで、なんか、げんなりしてしまった。

残される者、残していく者の、あらがえない事実にあらがう感情が
もっとあってもいいかなーって思った。
この小説にかかれてる、穏やかさって、その後に訪れるものだと思う。

その静かな悲しみと穏やかさだけを、差し出されても
もうひとつピンと来ないんです。

まぁ、でも。
ものすごく、よく出来てる。
他の話で出てくるひとの、絡みも絶妙だし
くさいけど、おしゃれなカンジもあるし
・・・でも、泣けないんだよなぁ。この題材にして。

(2008-02-22)
[5点] 丁寧に描かれた人の死と、その周辺の人たち。綺麗で、泣けて、考えさせられる、素晴らしい小説だった。
この本には、様々な死が描かれている。その世界には死を迎える本人と、その周囲の人間というものが存在する。
人間は、ひとりで死ぬわけではないというある意味優しく、ある意味残酷な事実を、感じる。
周囲の人や愛する人の心の痛みを丁寧に描き出す話しがある。
本人の無念さを描き出す話しがある。病と闘う強い心を持つと決める話しがある。
筆者が描き出す5つの世界は、どれも強くて、とても美しい世界だ。
それらが組み合わさり、世界が交錯するように迎えるフィナーレーは、少しできすぎだが感動的。
人の死を考える時に、ぜひ読んでみて欲しい。
こういった文学に触れて育つ人は、人の命を大切にするようになると思う。
不覚にも何度も泣かされてしまったが、筆者のいつもの本と一緒で、泣いて嫌な気持ちにならない本だった。
お勧めします。 (2008-02-17)
[5点] 「文庫のためのあとがき」を読むためだけに文庫も買うだろう。
「死」をテーマにした本では感動しない。
ましてや落涙することなどありえないと思っていた。
なぜなら、「死」は特別なことではなく、誰にでも訪れる。
死なない人間など存在しないからだ。
当たり前のこととして「死」を受け入れることが出来るから、
「死」をテーマにした本では感動したことがなかった。


そこで、本書である。
私は、情けなくも、通勤電車で本書を手にして、涙を流していた。
泣くために本書を手にしたのでは決してない。
それは不意に訪れたのだ。
231ページから232ページを読んでいたとき、
不覚にも涙してしまったのである。
なぜか。
それは、私にも子供がおり、
「遺される子供」に思い至ったからだろう。
このページに書かれている子供たちの姿は、少なくとも私にとってはいい意味でショックだった。
子供を持つ人が読めば、あなたの琴線に触れること間違いない。


しかし、重松清はうまい。
そして、本書は歴史的名作だと思う。
「その日」関連の章もいいが、「潮騒」だけでも十分満足させられるだけの名作である。


これから本書を手にする方は、心して読まれたい。
不意に揺さぶられますよ、心が。

文庫がでたら、それもきっと買うだろう。
「文庫のためのあとがき」を読むためだけに。
(2008-02-10)
[2点] う〜ん
良いんだけど、ちょっと僕には感傷的過ぎかなあ・・・。

どの短編もパターンが似ていてだんだん飽きてしまった。
感動する人とそうでもない人がはっきり分かれる本だと思う。 (2008-01-13)
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